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2016/02/13

交流電化と電源周波数

古い話になるが、2014/12に東海道新幹線の50Hz -> 60Hz 変換器の更新の記事があった。

JR東海、新幹線の周波数変換変電所2カ所の周波数変換装置を静止形に入替え http://news.mynavi.jp/news/2014/12/02/016/




上越・東北新幹線は 50Hz で走っている訳だし、北陸新幹線は長野で既に 60Hz だから、50/60Hz 両用の車輛も存在する。しかし、全体を 60Hz で設計した東海道以西の新幹線を今更 50Hz に変える選択はないだろうというのが、私の感覚である。現在地上で周波数変換できているものを、敢えて車上で変換するように変えるのは、車輛を重くすることになるからだ。
もちろん、その理屈を一般の人が知っているとは思わないのだけれど、工学部の中でも電気工学を学んだ人の常識でしかないということを知ることになった。




現代は、モーターを回すのに自由な周波数の交流を半導体で作り出す時代だから、電源は何でも大差ないだろうという意見を聞いたのである。なるほど、言われてみると、そう考えるのも無理はない。直観的にそんなはずはないと思ったが、説明するには車輛の実装を思い起こす必要があった。

電源電圧が 25kV もある (架線から集電する電流を小さく済ますためには、電源電圧を高くする必要がある) のだから、それをいきなり半導体にかける訳には行かない。調べてみたら 3.3kV の素子があったが、それでも電源電圧を一桁降圧しなければ、周波数変換どころではない。


富士電機のパワー半導体製品
HPM (High Power Modules)
AlSiC Baseplate (High reliability type)
 http://www.fujielectric.co.jp/products/semiconductor/usage/railway.html




降圧自体は変圧器を使えばできる枯れた技術だが、そこに電源周波数が絡んでくる。その点が、電気工学の知識なのだった。変圧器は鉄でできた芯に銅線を巻いたものだが、鉄芯の利用効率が周波数が高いほどよいのである。50Hz の変圧器は、60Hz の 1.2 倍の重さになる。重さがさらに重要な旅客機では、地上の電力供給とはほとんど関係ないので、400Hz を採用して軽量化を図っている。

そういう理由で、60Hz 用の変圧器しか積んでいない東海道系列の新幹線が、敢えて重い 50Hz の変圧器を積むとは考え難いのである。東海道新幹線の 50Hz 地域に入る区間に、現在は地上で変換した 60Hz 電源を供給している訳だが、その地上変換をやめるためには、この区間に入る全車輛の変圧器を重いものに積み替えなければならないのだから。




その時にはそこまでしか考えなかったのだが、その後にドイツはどうなのだろうと考えた。ドイツの電気鉄道は、初期に実用化されたために低い周波数を使う必要があって 16.7Hz を使っているのである。(フランスは 50Hz) それは、50Hz の三倍の重さの変圧器を必要とすることになるはず。

俄かには信じられなくて探してみたが、魔法は発見できなかった。wikipedia に曰く



The 15 kV, 16.7 Hz AC railway electrification system. http://en.wikipedia.org/wiki/15_kV_AC_railway_electrification

>  Due to high conversion costs, it is unlikely that existing 15 kV, 16.7 Hz systems will be converted to 25 kV, 50 Hz despite the fact that this would reduce the weight of the on-board step-down transformers to one third that of the present devices.




それが現実だろう。その制約の下で高速鉄道を開発するのは大変だったろうと思う。





話は地上に降りる (空からではなく、車上から)。現代は半導体の時代で、50Hz 用の変圧器は 60Hz でも使える。なら、東日本を 60Hz にするのも難しくなくなっているのでは?
と上の話をしながら思った。その疑問を、電力会社の友人にしたら、「結局、発電機なんでしょうねえ」。そりゃそうだ。無益な妄想であった。

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