き電
「き電」という学術用語がある。電車に電力を供給する (feed) ことで、学会でも鉄道総研のような組織でも、混ぜ書きをしている。
漢字廃止論を確信してやっているのなら、仕方がない。しかし、「常用漢字にない難しい漢字」というだけの理由で混ぜ書きにするのは、あまりに浅薄ではないか。
この言葉、元は「饋電」と書いた。字がわかれば、「饋」の意味は「贈る」、用例に「饋薦 (= 食物をすすめる)」と知ることができる。しかし、「き電」と書かれては、手も足も出ない。
鉄道総研などは、上に引いたように今でも混ぜ書きをしているが、学会の圧力に負けずAT饋電方式、AT饋電法などに元の字が使われているのは、心強いことだと思っている。
漢字狩りで、字を勝手に別のものに置き換えてしまう罪も、大きいと思う。「交差点」と書いて不思議に思わない人が大多数ではないだろうか。「交叉点」だった言葉を、「叉」が使いたくなかったので、交わる意味がない「差」に置き換えてしまったのだ。非道。
鉄道分野では、「轍叉」という、見ればわだちが交わるという意味が明確な言葉が、「てっさ」という平仮名書きにされてしまった例もある。この分野には、「轍査」
(轍を検出する)
という別の言葉もあるのだが、こちらは「てっ査」。表記に差があるというだけで、資料は全く判じ物。最初は二つの別の単語が出てきているに気付かず、首をひねった。
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